春から夏にかけて、自然界では「陽気」がどんどん増していきます。東洋医学では、この陽気が経絡という通路を通じて全身を温める役割を果たしていると考えられています。しかし、陽気が過剰になったり滞ったりすると、かえって体調不良の原因になることもあります。
例えば、春になると頭痛やふらつき、嘔吐などの症状が出やすくなる方もいるのではないでしょうか。これは、陽気には上へと昇る性質があり、気の流れが頭部に集中してしまうために起こります。元気なときは問題なく対応できるものの、体力や気力が落ちていると、こうした不調が現れやすくなるのです。
また、中国医学の五行説では、春は「肝」が乱れやすい季節とされています。「肝」は感情を司るほか、「目」や「筋」とも関係が深いため、春は目の充血や筋肉疲労、イライラや不安定な気分が現れやすくなります。特に4月は、年度の切り替えによる生活環境の変化も多く、ストレスがたまりやすい時期。つい食べすぎてしまうのも、この「肝」の乱れと関係しています。
鍼灸では、過剰に上昇した気を足や手のツボで下げるとともに、体力・気力を補う治療を行います。春は過ごしやすい季節ではありますが、だからこそ油断せず、身体と心の声に耳を傾けて過ごすことが大切です。

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